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外国為替アナリスト内田稔のコメント「原油相場で明暗分かれる為替市場の鳥観図」
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執筆アナリスト
CCIアセットパートナーズ
外国為替アナリスト内田 稔
うちだ みのり
2月以降の振り返りと見通し
衆院選後に152円台まで下落したドル円はその後、持ち直した。高市総理が利上げに難色を示したとの報道やリフレ派とされる2名の日銀審議委員の人事案を受け、金融緩和の長期化が円安を誘った。その上、中東での緊張激化が原油相場の急騰と相まって「有事のドル買い」を誘発するとドル円は一時158.90まで上昇した(図1)。
石油と石油製品の純輸出国である米国にとって、原油相場の上昇は貿易収支の改善を通じたドル高要因となる。反対に純輸入国の日本やユーロ圏では貿易収支の悪化が見込まれ、通貨安を招く。尚、この間、ユーロ円は小幅に下落しており、3通貨の中でユーロが最も弱い。昨年3月、ドイツやEUが財政拡張へ舵を切ってから投機筋はユーロ買い(ロング)を維持してきた。最近の地政学リスクの台頭を踏まえたポジション解消がユーロ安を促しているとみられる(図2)。
当面の見通し
当面、原油相場の動向が為替相場にも強く影響しそうだ(図3)。仮に、原油先物相場(WTI)が高止まりする場合、有事のドル買いも続く。ドル円の160円超えやユーロドルの1.15割れが現実味を帯びる。ユーロロングの解消が続く間、ユーロ円の上値は重いだろう。ドル高相場の局面では、円買い介入の効果もかなり減殺されそうだ。金融政策を巡ってはインフレが警戒されるものの雇用の最大化も担うFRBは、2月雇用統計の悪化を受けて様子見を続けるとみられる。これに対し、物価の安定を政策目標に掲げるECBの方が原油高に対して利上げモードに転じる可能性が高い(図3)。
「有事のドル買い」には及ばないまでも、対円では上昇に転じる公算が大きい。日銀はインフレを警戒した利上げと国内外への悪影響に配慮した様子見の間で揺れるだろう。前者なら一定の円安抑制効果が期待されるものの、後者なら一昨年高値の161.95超えも視界に入る。 反対に原油相場が反落すれば有事のドル買いが剥落する。雇用統計を受けた利下げ観測がドルへの重しとなるほか、関税への違憲判決が財政悪化懸念に波及する場合もドル安が進みやすい。その際、ドル円も下落するとはみられるが、日本の実質金利が依然としてマイナス圏にとどまり、貿易収支などのフローでも円売りが優勢だ。リスク選好の円売りも見込まれ、ドル円は次第に下げ渋るとみられる。ドルと円がともに冴えない場合、ユーロなど他通貨が浮上する。弱い円との対比が鮮明となってクロス円は上がりやすくなる。ユーロ円の最高値(187.87)更新も想定する必要が出てこよう。
2026年3月11日、日本時間9時脱稿
内田稔うちだ みのり
株式会社CCIアセットパートナーズ外国為替アナリスト、高千穂大学商学部教授(専門は国際金融論、外国為替)、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員
1993年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行後、一貫して市場部門に在籍。2011年4月から2022年2月までチーフアナリストを務め、2022年4月から現職。金融専門誌J-MONEYの東京外国為替市場調査では2013年から9年連続アナリスト部門個人ランキング第1位。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本金融学会および日本ファイナンス学会会員。テレビ東京ニュースモーニングサテライト、ロイターコラム外国為替フォーラム、プロピッカー(News Picks公式コメンテーター)などメディアでの情報発信も多数。
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