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外国為替アナリスト内田稔のコメント「日米の対照的な金融政策とドル円相場の行方」
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執筆アナリスト
FDAlco
外国為替アナリスト内田 稔
うちだ みのり
11月以降の振り返りと見通し
高市内閣発足後の地合いを受け、11月もドル円相場は堅調に推移した。複数のFRB高官発言や10月のFOMC議事要旨を受け、12月の利下げ観測が後退すると世界的に株式相場が軟調に推移し、リスク回避的となったが円安が継続。11月20日には今年2月以来の高値となる157.90まで上昇した。また、ユーロ円やスイスフラン円も最高値を更新するなど円安色が目立った。一方、片山大臣の円安けん制トーンも強まる中、為替介入が意識されると高値警戒感が台頭。その上、政府機関再開後の米国では経済指標の下振れが相次ぎ、ウォラー理事など有力なFRB高官も利下げを支持すると12月利下げの織り込みが9割に達し、ドルが反落。さらに、日銀の12月利上げ観測が高まるとドル円も小反落。ADP雇用報告など労働市場の悪化を示す指標もドル円の重しとなり、12月の第1週には155円台を割り込む場面もみられるなど、上値も重くなった(図1)。
12月、米国では利下げ、日本では利上げがそれぞれ決まる見通しだ。ただ、米国では労働市場の悪化が続く一方、FOMC参加者の中にはインフレを警戒する声も根強い(図2および図3)
26年末の政策金利の予想中央値は前回9月の3.4%から大きくは変わらないであろう。また、任期を来年5月に控えたパウエル議長も後任へのバトンタッチを意識する頃合いだ。来年以降について、明確な方向を示さない可能性が高い。その場合、利下げ自体は既に織り込み済みであることから、FOMC後はイベント通過によって、ドルが寧ろ持ち直す公算が大きい。対する日銀の利上げも広く見込まれている。植田総裁から積極的な利上げ継続方針が示されない限り、利上げ決定後にやや円安となる可能性も十分だ。この為、日米の対照的な金融政策を以てしても、155円割れでは底堅さをみせるのではないか。ただ、直近高値(157.90)超えには材料不足だ。年内は155円台を中心とするもみ合いが続きそうだ。尚、トランプ政権の関税を巡る最高裁の判決が待たれる。仮に違憲判断が示された場合、米国の財政悪化をテーマにドル安が進む可能性があり、要注意だ。(12月10日9時脱稿)
内田稔うちだ みのり
株式会社FDAlco外国為替アナリスト、高千穂大学商学部教授(専門は国際金融論、外国為替)、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員
1993年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行後、一貫して市場部門に在籍。2011年4月から2022年2月までチーフアナリストを務め、2022年4月から現職。金融専門誌J-MONEYの東京外国為替市場調査では2013年から9年連続アナリスト部門個人ランキング第1位。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本金融学会および日本ファイナンス学会会員。テレビ東京ニュースモーニングサテライト、ロイターコラム外国為替フォーラム、プロピッカー(News Picks公式コメンテーター)などメディアでの情報発信も多数。
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