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外国為替アナリスト内田稔のコメント
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執筆アナリスト
FDAlco
外国為替アナリスト内田 稔
うちだ みのり
先月の振り返り
157円台で寄り付いた6月のドル円は堅調に推移し、月末には161円台に達しました(図1)。

6月の円は主要通貨に対し、全面安となっており、クロス円も堅調に推移しました(図2)。

こうした背景として、3点を指摘することができます。まず、欧州議会選挙結果に端を発したフランスの政治不安の台頭です。これは、ユーロ安ドル高を招き、ドル円にもドル高圧力となって波及しました。次に、日米間の金融政策のスタンスの違いです。米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を予想通り据え置いた上、政策金利の予想分布図(ドットチャート)にて年内1回の利下げを示唆しました。3回の利下げを示唆した3月に比べ、市場にはタカ派と映りました。対する日銀も国債買入れ額の減額方針を決めましたが、詳細の公表を7月会合に先送りした結果、市場ではハト派と受け取られました。最後は、市場のリスク選好度の高まりです。6月は米国の経済指標を受け、利下げの織り込みが高まりました。これが株式相場への追い風とみなされ、市場に安心感をもたらしました。
今後の見通し
市場では介入警戒感が漂っていますが、引き続きドル円は堅調に推移する可能性が高い情勢です。一方、米国の労働市場の需給ひっ迫感が和らいでおり、インフレも減衰しつつあります。日米金利差に照らせば、足もとのドル高円安に行き過ぎの感も否めません(図3)。

米経済の減速を示す経済指標や為替介入があれば、ドル円の続伸は困難となり、軟化する展開も十分見込まれます。7月は特に日銀の金融政策に注目です。市場のコンセンサスは、1~2年で月間の国債買い入れ額を現在の月間約6兆円から3兆円程度まで減らすというもの(QUICK調査)。実際の減額幅がこれを上回れば円安に歯止めがかかる一方、予想以下の場合、円の一段安を招きかねません。年内を見通せば米国の利下げと日銀の利上げが始まるとの前提の下、ドル円がピークアウトを迎えるとの見方に変更はありませんが、短期的にはドル円の上振れに警戒が必要です。
2024年7月16日 脱稿
※図1、3のデータ期間:2022年以降
※各図出所:Bloombergのデータを基にFDAlco作成
内田稔うちだ みのり
株式会社FDAlco外国為替アナリスト、高千穂大学商学部教授(専門は国際金融論、外国為替)、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員
1993年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行後、一貫して市場部門に在籍。2011年4月から2022年2月までチーフアナリストを務め、2022年4月から現職。金融専門誌J-MONEYの東京外国為替市場調査では2013年から9年連続アナリスト部門個人ランキング第1位。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本金融学会および日本ファイナンス学会会員。テレビ東京ニュースモーニングサテライト、ロイターコラム外国為替フォーラム、プロピッカー(News Picks公式コメンテーター)などメディアでの情報発信も多数。
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