
公開日:2024/6/21
iDeCoと企業型DC:制度の理解と検討ポイント~基本編~
COLUMN
老後2,000万円問題をきっかけに、セカンドライフのご不安を見聞きする機会が大きく増えたと感じています。老後の積み立てに有利な制度としてメディア等でiDeCo(個人型確定拠出型年金)特集を目にした方や、お勤め先に福利厚生拡充を目的に企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」と記載)が導入された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは2回に分けてiDeCoと企業型DCの知っておくべきポイントや利活用方法について分かりやすく解説していきます。
01
公的年金制度は大丈夫?
近年私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。経済環境もさることながら、老後の収入の柱である年金制度も例外ではありません。
日本の公的年金制度は賦課方式を採用しています。簡単に言うと現役世代から年金受給世代への仕送り方式となっています。よくマスメディアで将来年金がもらえないかもと不安をあおる報道がなされますが、支給原資は働く世代が納める保険料や国庫負担、積立金の一部で賄われており「もらえない」可能性は極めて低いと言えます。
しかしながら、少子高齢社会の進展により年金の給付水準は変動しうると考えられます。
そのなかで公的年金にプラスする私的年金であるiDeCoや企業型DCの役割はますます大きくなっていると思われます。
<公的年金制度のしくみ>

<公的年金の規模と役割>

出典:「年金制度基礎資料集」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001167128.pdf)を加工して作成
02
iDeCoや企業型DCの役割
iDeCoとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。
公的年金と異なり、加入は任意で、加入の申込、掛金の積立、掛金の運用の全てをご自身で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受けることができます。
企業型DCとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる企業年金制度の一つです。
公的年金、iDeCoとは異なり、在職している法人に福利厚生制度として導入されている場合のみ加入することができます。企業が掛金を積み立て、加入者ご自身で運用していくことで、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受けることができます。
どちらの制度も積立て時、運用時、受給時にそれぞれ税制メリットがあり有利に積立を行うことができます。公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための一助となり得ます。
<公的年金制度の構造 >

出典:「年金制度基礎資料集」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001167128.pdf)を加工して作成
03
iDeCoと企業型DCを始める際に知っておきたいポイント
iDeCoと企業型DCで必ず押さえていただきたいポイントは原則60歳まで引き出せないという点です。ご自身の老後まで引き出せない貯金箱をイメージしていただければと思います。また60歳に引き出しができる条件として通算加入者等期間が10年以上という条件が付きます。長い付き合いとなりますが、積立時の税制メリット、運用益の非課税、受取時の退職所得控除利用可能など、税金のメリットが整っている制度と言えます。
<通算加入者等期間とは >
確定拠出年金の老齢給付金の支給要件となる期間で、加入者期間と運用指図者期間を合算した期間のことをいいます。ただし、60歳到達月の翌月以降の期間は算入しません。
年金資産を移換されたことがある方の通算加入者等期間は、iDeCo、企業型DCの加入者期間と運用指図者期間のすべてを合算した期間です。


04
金融機関を選ぶポイント
近年iDeCoの手数料引き下げを行う金融機関が増えてきました。iDeCoの手数料は加入時と加入後に大別され、加入後の手数料(運営管理手数料)引き下げは目につきやすい項目かと思います。
もちろん手数料は重要なポイントですが、ご自身が何を重視するかで契約すべき金融機関は異なってくると考えられます。
手数料や商品ラインナップのみを重視する場合はネット証券が候補になると思います。反対に対面で一貫した手厚いフォローや、将来的に新NISA、住宅ローンなど総合的な金融相談も行いたい場合は、ご自身のメインバンクを候補に選ぶと良いでしょう。
前章でご紹介したように長い付き合いとなる制度ですのでご自身に合った金融機関を選ぶことが大切になります。
05
まとめ
- 公的年金の給付水準は変動する場合がある
- 公的年金と合わせて持つことが老後の安心感につながります
- 原則60歳まで引き出しできません。税制メリットを活用しながら長く付き合いましょう
- ご自身の重視する内容よって金融機関を選びましょう
執筆者
株式会社FDAlco
RIA部 チーフアドバイザー 田鶴 友大
株式会社FDAlco 免許・許認可:金融商品取引業(投資助言・代理業)北陸財務局長(金商)第26号/加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会